2023年で日本上陸50周年を迎えるシェーキーズ。日本のピザ文化を支えてきた有名チェーン店で、東京を中心に全国各地に店舗を展開しています。
歴史ある人気店が今どのような課題を抱え、どんなマーケティングを行っているのかを、シェーキーズ営業部 営業部長の水野徹さんと、シェーキーズのインフルエンサーマーケティングをはじめブランドサポートを行ってきたユニットのコンサルティングチーム「イチタスイチハタンボノ田タタ」(以下チーム田タタ)のえーちーさんにお話を伺います。
会社情報
- 会社名:ロイヤルフードサービス株式会社
- 事業部:シェーキーズ営業部
- 担当者:営業部長 水野 徹様
- 所在地:〒154-8584 東京都世田谷区桜新町1-34-6
- 店舗数:シェーキーズ 19店舗/ロイヤルフードサービス 441店舗
- 公式サイト:https://shakeys.jp
ロイヤルグループは1951年、戦後の国内線営業開始と同時に福岡空港で機内食搭載と喫茶営業をスタート。
「ロイヤルホスト」「天丼てんや」「シェーキーズ」「シズラー」などの外食の有名チェーンの他、「リッチモンドホテル」などのホテル事業、高速道路や空港内施設の運営を行うコントラクトサービス事業なども幅広く手がけている。
近年は家庭でレストラン品質の味を楽しめるフローズンミール「ロイヤルデリ」にも力を入れている。
ピザのパイオニアとして半世紀愛されてきたシェーキーズが直面していた課題
――シェーキーズはどのようなお店なのか簡単に説明していただけますか。
水野さん:シェーキーズはアメリカ生まれのピザパーラーで、日本に上陸したのは1973年です。2023年で50周年になります。以来、日本でのピザ専門店のパイオニアとして多くのお客さまの思い出に残るレストランとして歩んできました。ブランドメッセージの「We Serve Fun」をモットーに、食べ放題のバイキング形式で楽しい食体験を提供し続けています。
――今はどのくらいの店舗数があるのでしょうか?
水野さん:首都圏を中心に19店舗を営業しています。
――ピザといったらやはりシェーキーズという世代の方も多いですよね。今から数十年前、早い段階でピザ文化を浸透させたお店というイメージがあります。
水野さん:そうですね、ただ、それは過去の話でして。「シェーキーズはまだあったんだ」と言われることが多いんです。それがまさにブランドが抱えていた悩みと言えるかもしれません。よく言われるのが、「まだあったの?」「昔行ったよ、シェーキーズ」の2つ。全盛期の90店舗ぐらいから19店舗に縮小していくなかで、認知度も下がっていったのが現状です。それから、ターゲットのズレもありました。シェーキーズはピザを食べ放題で提供するスタイルですから、若者が行くというイメージで、団体が楽しめる店でもある。昔から大学のサークルや打ち上げで使っていただくブランドだったんですね。どこに向かっているのかがわからなくなってきた。その結果、シェーキーズらしさがなくなっていくことにつながっていったんです。
知名度ダウン、コロナ禍……現状を打破すべく「値引きをしない販売促進」をスタート
えーちーさん:チーム田タタとしては、お悩みを伺うところからスタートしました。お話を伺うと、若い子にとても合うお店。やはり若者を取り込んでいきたいと感じました。話を進めていくうちに「アオハル」というテーマを決めて、青春のひとときをシェーキーズで過ごしてもらおうと思いました。それが2021年10月の話。それから3ヵ月くらいをかけてイメージを固めていきました。
水野さん:私が着任したのが、2021年の8月で、コロナ禍のダメージは大きなものがありました。コロナ前から行っていたことですが、お客さまを集めるのに値引きをしていた。これは、自分たちの価値を下げてお客さまに来てもらうということではないだろうか。まずは価値を高めてお客さまに来ていただくということをしたい。そして価値を伝える相手を明確にしようと思いました。シェーキーズはやはり若者と親和性の高い店ですので、積極的な販売促進のメッセージを打ち出すターゲットを、若者世代に絞ろうと考えました。そこから、若者にアプローチするためにはSNSを使い、「値引きをしない販売促進」を手伝ってほしいと、ユニットさんにお願いすることになったわけです。
どうやったら今の若者に反応してもらえるかメニューレベルから提案するSNSづくり
――この状況を受けて、チーム田タタではどのような動きをとっていったのでしょうか。
えーちーさん:そうですね。SNSといっても、ただ投稿するだけでは意味がないと思っていました。たくさんの投稿があるなかでどう目立つか、どう残すかが、まず最初に考えたことでした。SNSの強化というと、だいたいアカウントを作りましょうというところから始まるのですが、シェーキーズはTwitterでは発信していたものの、InstagramもTikTokもしていませんでした。そんななか、私たちが考えたのは、インフルエンサーや一般の方がシェーキーズを露出してくれたときに、それがどう見られるか。自分たち発信だけでなく、他者が発信したときの見られ方まで考えましょうという話をしたと記憶しています。
水野さん:そのとおりです! 最初にシェーキーズを分析してもらったときに言われたのが「映えない」ということ。ピザって盛り付けてもキレイに写らず、若者がSNSを眺めているときに興味を惹くものにならない。古いよね、昭和だよね、シェーキーズは、という話になりましたね。そこで、今の若い世代にも反応してもらえる、刺さるものを目指しました。写真を撮る場所、写真を撮ってもらいやすい環境を用意していただいたというのが初めの一歩でした。
えーちーさん:ピザってワンピースにカットしてしまうと綺麗に写真に写りにくいんですよね。皿に盛っても、手で持ってもらっても。なので、2021年のクリスマスのときは手に持てるピザを作ってもらったんです。顔の横に持って写真を撮ってもらおうというイメージでした。ただ、小さいサイズのピザを作るのはかなりハードルが高かったと言えますね。あとはカラーです。ピザの生地は茶色系で地味なので、振り切ってピンクや緑などカラフルな色を提案しました。
クリスマスフェアを通して見えてきた他者に伝える商品、店づくり
――先ほどお話に出た他者が発信するとどうなるか、そこをよく考えての提案だったということですね。
えーちーさん:シェーキーズはとても良いお店なんですが、写真では良さが伝わらずもったいないと感じたので、そこをまず改善しようとしたわけです。よりかわいらしく、どう見せていくかを考えました。もともとキラーコンテンツの食べ放題があるし、とっても安い。それ以上の何か……シェーキーズに行きたい!と目的来店をしていただくために、ワクワクするとか面白そうとか、伝えようと思ったのはそこでした。
――このような提案を受けて、シェーキーズサイドとしてはどのように感じましたか。
水野さん:まあ、無理だなあって思いましたよ(笑)。
えーちーさん:(笑)。
水野さん:お客さまにインパクトを与えるということは、今やっていることを変えるということになる。これでは現場が耐えきれない。いくらSNSで楽しさを伝えても、お店のクルーが大変では意味がないんですよね。このギャップはやはり悩んだところでした。楽しさを表現するというのがなかなか難しくて。表現するにはわかりやすいアイテムを作らないとダメなんですね。
――商品だけでなく、フォトスポットや内装などの提案をされたそうで、店側の理解も必要だったかと思います。
水野さん:お店のクルーにも理解を得て、なんでもやりますよ、という感じで頑張ってもらっていました。それでも、実際は大変でしたね。お客さまが何を喜んでくださるのか、それが難しかった。そんななか、えーちーさんには装飾用の帽子を編んでもらったりもしましたよね。
えーちーさん:そういえば、帽子もイスのカバーも作りましたね。
水野:クリスマスフェアのアイテムを作ってもらってよかったです。
えーちーさん:どうしても置いてほしいと思ったんですよ!内装に関しては、例えば渋谷店は窓が大きく外が見えすぎて他のお店の看板が写真に写り込んでしまうので、ブラインドの設置をお願いしました。シェーキーズにいることを視覚的にきっちり見せたかったのです。フォトスポットも同じ狙いで設置しました。
アカウントすらないところからスタートした、シェーキーズのSNS戦略。クリスマスフェアを通して少しずつ若者への認知も広がっていきました。その後、どのようなマーケティングを行い、どのような結果を生み出していったのかは、パート2で詳しく紹介します。